2009年08月08日 06時00分

「“北野映画”に通じる先見性があった」伝説のクソゲー“たけ挑”制作秘話

『たけしの挑戦状』 (C)TAITO CORP./ビートたけし 1986   [拡大する]

『たけしの挑戦状』 (C)TAITO CORP./ビートたけし 1986  

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 お笑いタレント・ビートたけしが監修したことで知られる超難解ゲーム『たけしの挑戦状』(タイトー)。3月にはWiiバーチャルコンソール用ソフトとしても配信され、今月からは着メロ、着うたとしてケータイに初登場するなど、発売から20年以上経った現在も、伝説の“クソゲー”として揺ぎ無い地位を確立している。たけしのアイデアを余すところなく取り入れたという制作当時の状況を同社広報の豊田巧氏に聞いた。豊田氏は「不条理だからこそ、そこに“リアリティ”がある。実は後の北野映画に通じる先見性があった」と意外な事実を明かす。

 同作は、1986年にファミリーコンピューター用のゲームソフトとして発売。ビートたけしが監修し、発売前から「常識があぶない。」や「謎を解けるか、1億人。」など、刺激的なキャッチコピーでゲームファンを魅了。総売上げ100万本を越える大ヒットを記録した。しかし、実際にゲームをプレイした人からの評価は散々。あまりの難易度の高さから、伝説の“クソゲー”という称号を手にした。

 “たけ挑”のような特殊なゲームを発売するにあたり、会社としてすぐにゴーサインが出たのだろうか? 豊田氏は「当時、たけしさんがゲームに凄く興味を持たれていて、たけしさんサイドからお話を頂いたんです。新たな“表現の場”としてテレビゲームに興味をもたれたのだと思います。コメディアンとして頂点を極めていた方からオファーを頂いたら断れるわけがありません」と笑顔で振り返る。

 たけしと担当プログラマーが連日打ち合わせを繰り返し、遂に究極の“不条理ゲーム”が完成。一見、無駄と思うような展開が目白押しだが、「人生とは無駄なことだらけ」という、たけしからの皮肉めいたメッセージとも捉えられる内容だ。「たけしさんの映画の中でも一見、無駄なことと思えるような不条理な展開ってあるじゃないですか。それって“たけ挑”も同じなんですよ。離婚して会社に辞表出して宝探しに出る。事を成す時には、人間って整理整頓するでしょっていう“リアリティ”を追求したんだと思う。おそらく映画の前にゲームで試したかったのでしょう。ちょっと早過ぎましたよね。早すぎた『グランド・セフト・オート』というか(笑)」。

 ゲームが発売されるや、品切れ店が続出するなど、大ヒットを記録。だが、実際ゲームをプレイした少年少女たちから、あまりに難解かつ不条理な展開に問い合わせの電話が殺到。「当時のゲームは勧善懲悪が基本だっただけに、その“リアリティ”を受け入れられなかったのかも知れないですね」。ところが、彼らが大人になるにつれ、ゲームの内容が現実社会にリンクしたものであることに気づいたのか、“クソゲー”という称号で現在に語り継がれる作品となった。「この間、『“たけ挑”被害者の会』というイベントに参加したんですが、イヤー皆さん熱がありましたよ。愛憎入り混じっている感じでね」と感慨深げだ。

 愛憎入り混じりながらも20年以上にも渡り、さまざま形で取り上げられてきた“迷作”だけに、続編に期待する声も決して少なくはないはず。「個人的には、今のハードで“たけ挑”を作ったらどうなるか、非常に興味があります。ただ、今は日本のみならず“世界の北野”ですからね。難しいでしょう」と笑う。

 ハードの進化に伴い、実写さながらの高画質で表現できることに成功した現在のゲーム業界だが、開発に巨額の費用が投じられるなど“歯止め”が効かなくなっていることも事実。「“たけ挑”のようなレトロゲームが再評価されている部分に、新たな“ヒント”が隠されているかも知れないですね。携帯ゲームが流行っているのも、その傾向が強いからだと思います」と“原点回帰”への想いを明かす。「今年から来年にかけて、ゲーム業界の変革の時期がすぐそこに近づいている。でも、そんな時こそ“突然変異”が生まれるもの。皆が『右向け右!』の時に左見るのもいるというか……。“たけ挑”見れば分かると思いますが(笑)」。

【動画】『たけ挑』が着メロ、着うたで登場! たけしからのコメント(09/08/06)

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